『 ウチのごはん  ― (3) ―  』

 

 

 

 

    ザ ザザザ −−−  ザザ −−−−

 

「 う〜ん これでいっかな〜〜  すっきりしたあ 」

ジョーは 箒と塵取りを持ち上げて 辺りを見回した。

 

ここ ― コズミ邸は 庭木も大きなものが多く 季節の変わり目には

葉っぱやら 花びらやらが 降り注いでくるのだ。

30分以上かけて 彼はなんとか玄関前に寄せ集めた植物たちを

塵取りの中に収め終わった。

 

「 また落ちてくるだろうけど ・・・ ま いっか。

 あ 〜〜 廊下の拭き掃除も やっておこ! 

 へへへ  雑巾がけ ってさあ 案外面白いんだよね

 ここの廊下って きゅ きゅ きゅ〜〜って音がしてさ

 拭き終わると なんかさ 光るんだよ いい感じなんだ 

 

   ちゃぱ〜〜  っと 打ち水をして 彼は勝手口に回った。

 

「 外回りの掃除 終わりましたァ 」

「 あ ジョー君 ご苦労さま〜〜 ありがと!  

キッチンでは 割烹着姿のオバサン が に〜っと笑顔だ。

長年 コズミ邸に通ってきてくれている ベテラン・凄腕!の

家政婦さんなのだ。

「 タナカさん  ついでに花壇に水 やってきますね 

「 わぁ ありがと!  助かっちゃう〜〜〜 

 あ 君 お腹へってない? 」

「 あ〜 大丈夫ですよ  朝メシ たっぷり食べてきました! 」

「 そっか〜〜 でもね 小腹が減ったらさ お握り・・・

 キッチンに置いておくから 食べてね 」

「 は〜い ありがとうございまあす 」

「 ふふふ   あ 今日はね 編集サン が来るのね。

 センセイが応対してくださるけど  お茶 お出ししてくれる 」

「 はい ・・・ へんしゅうさん って出版社の ですか 」

「 そう。 ず〜〜っとねえ センセイの研究論文をねえ

 まとめたい!って  ね 

「 すご〜いですねえ ・・・ コズミ先生って 」

「 だよねえ  それで すご〜く気さくでさ ・・・

 あたしゃ あの先生のために命かけてウマイ御飯、作るからね! 」

「 タナカさんの漬け物  さいこ〜〜っス ! 」

「 え そうかい?  嬉しいねえ〜〜  今日も美味いの 漬けておくよ 

 そうだ 残った分、袋に入れておくからさ 持って帰って 」

「 え いいんですか〜〜 

「 美味しいトコロを食べて欲しいのさ。

 センセイからもね  ジョー君に美味しいもの 食べさせてくれって

 いわれてるし 

「 あは うれし〜〜 ありがとうございますぅ〜〜 」

「 ふふふ  外回りの仕事 引き受けてくれて あたしゃ すごく

 嬉しいよ〜  ジョー君、拭き掃除もきっちりだし ・・・

 あ お握り と 漬け物 こっちのテーブルに置いておくからね〜〜

 持って帰ってね 」

「 ありがとうございます !!!  庭に いますっ 」

「 たのむね〜〜〜 」

 

ジョーは 庭に向かって駆けだした。

 

      あは ・・・ 

      なんか  いいなあ〜〜〜

 

      このウチ 好きだなあ〜〜

      < 自分ち > って こんな感じなのかな

 

先日 コズミ博士が 出版社のアルバイトを紹介してくださった。

 

「 ― どうですかな  まあ 雑用 兼 掃除 係ですがね

 編集部の仕事など 垣間見ることができますよ 」

「 ! うわあ〜〜  ほ ホントですかあ〜〜 嬉しいなあ!

 あ  でも。

 ぼ ぼく  なんの経験もないんですけど そのぉ ・・・

 ・・・ いいんですか! 」

「 ふう ですからね ちょっとウチで 練習 するかな? 」

「 れ 練習??? 」

「 そうです。 ウチにもね 時々編集サンが来るのですよ。

 そのヒトの様子とかを 観察しておくといいかもしれません。 」

「 い いいんですか? 」

「 ふぉ ふぉ ふぉ ・・・ もちろん。

 それと これは私からのお願いでね・・・

 ウチでチカラ仕事をしてくれるヒトが 欲しいのですよ。

 家政婦のタナカさんは 家事万能ですが さすがに外回りの仕事や

 庭掃除はキツそうでねえ 

「 ぼく!! やります! 得意なんですよ〜〜 掃除とか

 洗濯モノ干し とか! 」

「 おお ありがとう〜〜  それじゃ ウチでしばらく

 バイトしてくれますか ちゃんとバイト代 出しますよ 」

「 ― コズミ先生。 それは 」

「 いやいや 労働には正当な報酬を払わねば いかんです。

 私の方から ギルモア君にもお願いしておきます。 」

「 ・・・ ありがとうございます!!!! 」

 

 ジョーは ぺこり  とアタマを下げた。

 

 ―  そんなワケで 今、彼はコズミ邸に通っている。

早朝にでかけてゆき 昼には戻る < バイト > なのだが

彼は なんだかんだと夕方ちかくまで 残って居ることが多い。 

 

「 えっと ・・ 編集サンにお茶 か。

 日本茶でいいのかなあ?  ・・・ コーヒーとかじゃなくて? 」

タナカさんは お茶葉に急須、客用茶碗 を出しておいてくれているが。

「 う〜〜ん ・・・ 直接 聞いてみるか・・・

 もしかして 水! っていうヒトかもしれないしな〜〜 」

ジョーは キッチンでグラスを探しだしたり、コーヒー用のカップを

用意したり  なかなか忙しい。

家政婦のタナカさんが帰った後のことは ジョーが引き受けている。

「 掃除は終わった、 洗濯モノは・・・ まだだな〜〜

 あ  コズミ先生に書斎 ・・ は 入ったらダメだろうな。

 う〜〜ん よし 隣の部屋 掃除しとこうっと 」

 

書斎の隣の和室、散らばった書籍だの雑誌だのを整理し

掃除をしてから 雑巾で畳を乾拭きした。

中央に黒光りのする立派な座卓を据え 客用座布団も運んだ。

 

「 う〜〜ん ・・・ まあ こんなモンかな〜〜

 ここって客間なのかなあ? いや それは座敷か ・・・ 」

 

     ぴんぽ〜〜〜ん ・・・ !

 

「 あ !   はい〜〜〜〜 

玄関のチャイムが鳴り ジョーは駆けだして行った。

 

 

「 ―  あの。 お茶 どうぞ  

ジョーは 慎重な足取りでお茶を運んできた。

「 ・・・!  ああ すいませんな 」

書斎の隣の、例の部屋で 客人はきっちり正座をして待っていた。

 

      ・・・ そっか ・・・

 

      こういう時に 正座 するんだ?

      うん いい感じだよね

 

「 お茶にしたのですが ・・・ 珈琲がよければ淹れます 

「 あ ?  いやいや お茶がいいです。

 この御宅のお茶は 美味しいのですよ 

「 はあ ・・・ あ こっちに ミネラル・ウオーター

 置いておきます 」

「 ああ すいませんねえ〜   うん? 君 新顔だね〜〜

 私は ○○出版編集部のものです。 コズミ先生の担当で

 ・・・あ〜〜もう かれこれ 何年になるかなあ〜〜 」

中年をちょいと過ぎた編集氏は 腹を揺すっておおらかに笑った。

「 あのう 寒いようでしたら ヒーター いれますが? 」

「 いいよ いいよ 大丈夫。 

 この御宅は夏は風通しがよくて涼しいし

 冬は陽当たり良好で 温かいんだよ 

「 はあ ・・・ 二ホン家屋って いいですよね 」

「 そうだねえ  あ きみ バイト君かな ?

 先生のトコの学生さんかい  院生さんかな 」

「 え あ〜 あ 〜〜   はい ・・・ 」

「 いいねえ〜〜 ここのセンセイの元で学んだらね

 どこでも通用するよ。  というか 人生勉強ができる 」

「 ・・・ そうなんですか 」

「 ああ。  君は ラッキーだねえ 」

「 はい。  ・・・ あのう 一つだけ伺ってもいいですか 」

「 ?? なんです? 」

「 あのう・・・ 原稿って。 Web入稿 とかじゃないんですか?

 今は リモート・ワークで ・・・ 

「 よく知ってるね。 そうです 普通はね。

 でもコズミ先生との今回の仕事は 学術的にもとても貴重なものでね 

 こうして伺っていろいろとご一緒に検討する必要があるのですよ 」

「 ・・・ そうなんですか!

 ああ 小説 とかじゃないですものねえ 

「 そうなんだよ。  まあ ここも編集室ってことかな 

「 ・・・ すごい ・・・ 

「 ふうん? 君 興味あるんだ?  センセイのとこの学生さんなら

 工学部とか 理系でしょう? 」

「 あ〜 ぼく  ― なんでも知りたいんです 」

「 へえ・・・ いいねえ〜〜 君!  

「 いえ  あ   お茶、熱いのに替えますね。

 コズミ先生には ほうじ茶をお持ちしないと 」

「 お〜〜 ありがとう!  ・・・ あ 僕もできれば 

 ほうじ茶 いいかなあ 

「 はい もちろん! 」

 

      う わ〜〜〜

      な なんか ホンモノの編集サンとしゃべっちゃった!

 

      うわうわ〜〜〜  すっげ〜〜

 

その日はお茶をだしたり とっちらかった書斎の片づけをしたり

不明の原稿を探したり ―  大忙しだった。

そんな時も ジョーは掃除や片づけをしつつ じ〜〜〜っと観察を

続け コズミ先生と編集サンの会話に耳を澄ませていた。

 

 

夕刻 まだ陽の落ちないころ ジョーは帰宅した。

 

「 ただいまあ〜〜 」

「 お帰りなさい! お疲れさま〜〜 

フランソワーズが笑顔で迎えてくれる。

 

      えへ ・・・・!

      さ ・・・いこ〜〜〜〜〜♪

 

「 ねえ お昼は食べた?  お腹 減ってるでしょう? 」

「 あ あのね ぼくからお土産があるんだ〜〜 」

「 ?? なあに なあに? 」

「 キッチンで開けるね 」

「 ?? 」

 

   がさごそ ・・・ ことん。

 

お握りが数個 そして キュウリとナスの漬け物が 大皿に置かれた。

 

「 コズミ先生んとこの家政婦さんから なんだ〜 

 フラン〜〜 食べてみて? 」

「 おにぎり ね。  ああ 好い香りねえ  

 え これが ノリのかおり なの?? ふうん ・・・  

 こっちのは キュウリね?  あら ちょっとビネガーみたいな

 香がするけど ・・・? 」

彼女は お箸でそうっとキュウリを一切れ口に運んだ。

 

       パリパリパリ −−−

 

「 ・・・ これ なに???  ものすごく美味しい〜〜〜!

 二ホンのピクルス?? わたし、このきゅうりの、すごく好き!! 」

「 あは これはね〜 糠味噌・・ 糠漬けだよ 」

「 ぬか??  ん〜〜〜 すご〜〜い この味大好き ! 

 え こっちは ナス?  〜〜〜 おいしい〜〜〜〜 ! 」

「 わあ よかった 気に入った? 」

「 すごく!!  ね これ サラダに入れてもオイシイわよね? 」

「 あ〜 そうかも ・・・ 」

「 これ どこで買うの? 」

「 これさ タナカさんの手作りさ。 」

「 ! 家で作れるの???  ― わたし やりたい!!

 ねえ ねえ その ハウス・キーパーさんに教えてもらいたいわ 」

「 あ ・・・ うん 聞いてみるね 

「 お願いね!  〜〜〜〜 おいし〜〜〜〜  」

パリパリ −− いい音をさせ 彼女はほとんど一人で

漬け物を平げてしまった。

「 あは 本当に気に入ったんだね〜〜 」

「 あ ごめんなさい〜〜 わたし 全部食べちゃった・・・ 」

「 いいよ いいよ  タナカさん、喜ぶよ〜 

「 コズミ先生の御宅に来てくださる方なのでしょう?

 ね ね! わたしも連れていって! 

 わたし < ぬかづけ > 覚えたいの〜〜〜 」

「 わかったよ  ああ これ ウチでも食べられたら最高だよね 」

「 そうよぉ〜〜 サラダに混ぜてもいいし

 サンドイッチにしても美味しいわ!  チーズと一緒にすれば

 きっとね ウィスキーに合うと思うの 」

「 あ〜〜 そうかも〜〜〜 

「 うふふふ  博士もお好きよ きっと。 グレートも! 」

「 だといいなあ 」

「 あ ジョー。 お仕事の方はどうだったの? 」

「 うん ―  それがさ ・・・・

 あ ねえ お茶しよう〜  お握り たべようよ

 腹 へった〜〜  食べながら話したいな 」

「 そうね そうね  ジョーの好きなバナナ・シフォンケーキ

 焼いてあるわよ(^^♪ 」

「 うわ〜〜〜〜〜い ♪♪ 」

 

 ― さて こうして ・・・

フランソワーズもコズミ邸に通うこととなり。

万能家政婦・タナカさん から ばっちりお惣菜の作り方を

教わった。

「 ・・・ おいし〜〜〜〜 ! 」

「 お嬢さん、 そんなに喜んで頂けると 私しゃすごく嬉しいよ 」

「 だって だって滅茶苦茶オイシイです〜〜 」

「 ありがとう ・・・ 私もね お嬢さんに習った魚介類のトマト煮、

 重宝してますよ〜〜  白身の魚なんか絶品だわ 」

「 あら 嬉しい〜〜  アレ、わたしのママンのお得意料理なんです 

「 そうかい そうかい ・・・ お国の味 なんだね 

 そうそう とろとろのオムレツも! ウチの孫が だいすき! ってさ 」

「 わあ〜〜 よかったぁ 」

 

 ・・・ 小さな国際交流?なんかもありまして ・・・

ギルモア邸のメニュウは どんどん 日本のお家ごはん化 してゆく。

朝ごはんは ジョーのリクエストで 卵は断固とろとろオムレツ だが

最近では ゴハンと味噌汁 の日も出現している。

ギルモア博士も サバ味噌 とか カレイの煮付け がお気に入りだ。

 

ジョーも だんだんと手際がよくなって行ったのか

コズミ邸での仕事も 午前中で終わるようになってきた。

 

「 おはよう シマムラ君。 」

「 あ ・・・ ナカムラさん〜  いらっしゃいませ 」

 

コズミ博士担当の編集氏とも 顔見知りの仲になった。

「 え〜と ・・・ お茶の用意 おっけ〜 

 水はね〜 ここのウチの井戸水がいいんだって。  冷えてるし。 」

ジョーの仕事振りは どんどん進化していった。

 

「 ジョー君。 」

コズミ博士が 書斎から顔をだした。

「 はい?  あ お茶ですか〜〜  

「 いや それは大丈夫ですよ。  ちょっと今 いいですかな 

「 はい。 なにか ・・・ 」

「 あ〜 先日の編集部さんでのアルバイトですけどねえ

 来月から行けますか 」

「 え!!  ・・・ ほ 本当に ・・・? 」

「 先方さんもねえ 人手不足で大変らしくて 」

「 で でも ぼく まだ なにも 」

「 いやいや  きみの活躍でウチのタナカさんは大満足ですよ

 そうそう あの編集のナカムラ君も 君の事 < 推し > だそうで 」

「 ・・・!  ほ ホントに??  うわ〜〜〜 

「 では 来月から 」

「 あ コズミ先生!  あのう〜〜 ぼく ・・・

 このお家の仕事も 辞めたくないんですぅ 

「 いや〜〜 それはありがたいですけど 時間的にちょっと無理でしょう? 」

「 え 大丈夫です!  編集部さんのバイトって 10時からって

 コトですよね? 」

「 あ〜 そうですね  あの業界は朝はそんなに早くないですよ 」

「 でしょ?  だったら ぼく 朝イチでこちらに来て庭もウチも掃除して

 洗濯モノ 乾して。 それから 余裕で編集部に行けます!  」

「 それは まあ ・・・  しかし 君、疲れませんか 」

「 コズミ先生〜〜   ぼ〜くを誰だと〜〜〜〜 」

ジョー君は に・・・っと笑って 腕を曲げてみせた。

( ・・・ 力瘤 はできなかったけど )

「 あは  それはそうですけど ・・・

 我が家は とても助かりますが ― きみが大変じゃないですか 」

「 ぜ〜〜んぜん  お願いです やらせてください! 」

「 ジョー君 なんだか申し訳ないですなあ  

「 そんなこと!  あの コズミ先生。

 ぼく 先生の この家が大好きなんです! 」

「 ・・・ ジョー君。  それでは ― お願いしますよ 

「 はいっ ! 」

 

そんなやり取りがあり ジョーは早朝にコズミ邸に通うことになった。

「 ・・ おっはよ〜〜ございまあす〜〜〜 」

 

  カタン ― ポストから朝刊を取り込み 勝手口にまわる。

 

キッチンはすでに温かくいい匂いの湯気で いっぱいだ。

「 おはよ ジョー君  ごくろうさん 」

ガス台の前から 割烹着姿のオバチャンが振り返る。

「 おはよう〜〜っす  はい 朝刊デス。

 これから 庭掃除 始めますね 」

「 ありがと!  頼むね〜〜

 あ 帰りにまた覗いてね 腹拵えしてから行くんだよ 」

「 ありがと〜ございます! 」

 

ジョーが 早朝コズミ邸にゆくとすでにスーパー家政婦のタナカさんは

おさんどんを開始している。

そして 彼が庭掃除やら 座敷や廊下の掃除を終え戻ってくると

 ―   キッチンの机の上には でっかいお握りと糠漬けのキュウリ

が 乗っているのだ。 大きな湯呑みには熱々のお茶・・・

 

「 ・・・ うわあ〜〜 ・・・ ありがとうございます〜〜〜 

 

ジョーは ぺこん、とお辞儀をするともりもりお握りを食べる。

「 んま〜〜〜〜〜  今日は鮭フレークだあ(^^♪  

 んんん  漬け物もさいこ〜〜〜〜 」

しっかり完食し お皿と湯呑みをキレイに洗う。

「 よっし。  さあ 次の仕事へ かそくそ〜〜ち!!! 

・・・ と これは彼の < 気合い > であって

町中で それも普通の服で カチッ! は 絶対にしない。

 

    タタタタタ −−−−  茶髪を靡かせ駆け脚!

 

 

 ― その頃 ギルモア邸のキッチンでは

 

    きゅ。    フランソワーズは しっかりと包を結んだ。

 

「 さあ これでいいわ。 」

彼女はちょっと得意気に そして 満足気に 目の前の包を眺める。

早起きして 作ったスペシャル・サンドイッチだ。

「 そうよね〜〜  コンビニにはすごいたくさんの種類のサンドイッチ、あるわ。

 みんな 美味しそうよ。   でも ・・・ 

 でもね。 どうして中身が真ん中にしか入ってないの?

 サンドイッチって 端っこまでぎゅ〜〜っと詰まってなくちゃ。

 ママンは出来上がったサンドイッチに いっつもまな板で重石をしてたわ

 お昼に開けると 中身が零れそうだったもの ・・・ 」

 

  だ か ら。    今日のサンドイッチはパンの端まで ぎっちぎち だ。

 

「 うふふ〜〜  ジョーの好きなオムレツ・サンド でしょ?

 ハムとチーズときゅうり。 昨日のハンバーグ、半分に切って

 ソースとケチャップぬって。  自家製イチゴじゃむ。 

 うふふ〜〜  あ それから 別のタッパーに糠漬けサラダ。

 ジョー〜〜〜  全部食べてきてね♪ 

 

さて ちょっと休憩〜 と 熱いオ・レを飲んでいると 

 

    パタン。  ただいま ・・・

 

勝手口が静かに開いた。

「 あ お帰りなさい ジョー。 お疲れ様〜〜 

「 フラン??  早いね〜〜〜 」

「 うふふ  ジョーと一緒よ 

「 ?? 」  

「 今日から ― 都心の会社に行くのでしょ? 

「 あ〜  うん。 

 あの。  ぼく 今日から 編集部のバイト になります ! 」

「 おめでとう〜〜 ジョー!  」

「 えへ ・・・・ ありがと♪ 

「 ジョー。 はい。  お弁当、 つくったわ! 」

「 え ・・・ あの コンビニで買ってくつもりで ・・・ 

「 ノン ノン 」

フランソワーズは ちっちっち・・・と指を振る。

「 だあめ。 お弁当 持っていってください。

 ジョーが好きって言ってくれた サンドイッチ です。

 サラダも入ってます。  全部 食べてね 」

 

      ずむ。   大き目の包が手渡された。

 

「 ・・・・ !!! 」

ジョーは なにも言えずただ ただ そう〜〜っと その包みを持ち上げ

ずしり とくる重さを感じていた。

「 ・・・ フラン ・・・ あ  あ  ありがと ・・・ 

「 うふふ  しっかり食べてしっかりお仕事 してきてね 」

「 ん ・・・ ん ・・・ ありがと ・・・ 」

「 やあだあ〜〜 もう〜〜  ほら 顔 洗って?

 そして 張り切って行ってらっしゃい〜〜 」

 

     ぱん。    軽く叩いてくれた背中が ぽかぽか温かい。

 

「 え へ ・・・ うん! 」

 

     フラン〜〜〜〜  ありがと ・・・!

 

     ぼく 頑張る。 頑張るんだ〜〜

     だって  さ ―

 

ジョーは 胸の内で先日のギルモア博士との会話を反芻する。 

 

「 ジョー。  コズミ君から聞いたよ 就職したいそうだね 

「 ギルモア博士。  はい できれば正社員になりたいです 」

「 ― 経済的に困ってはおらんだろう? 

「 あの 博士。  ぼく ちゃんと就職したいんです 」

「 ほう 編集者になりたいのかい 

「 それも 目標ですが ― 

 あの ぼく。  しょ 将来  ・・・・ あ〜〜

 えっと。  フランと   け 結婚したくて。

 そのために きちんとした仕事につかないと ・・・

「 ジョー ・・・・ 」

ギルモア博士は ぎゅ・・っとジョーの手を握った。

「 ジョー。 あの娘 ( こ ) を  頼む 

 

      そうさ !

 

      フランソワーズに相応しいオトナになるんだ!

 

 

 

 ―  そして 数年後

 

「 博士    フランソワーズ。    ぼく 今日から〇○出版社編集部の

正式部員となりました。  どうぞ よろしく! 」

 

ジョーは 真新しいシャツにすっきりしたパンツ姿で挨拶をした。

「 ジョー おめでとう!  しっかり な 」

「 ジョー〜〜〜  ステキよ〜〜 」

「 スーツでなくていいのかい 」

「 はい ぼく 動き回る仕事なんで〜〜 」

「 では どうぞ このお弁当 持っていってね 」

 

    ずしり。    重量感のある小風呂敷包みが手渡された。

 

彼女のお得意は 海苔を二段に挟んだ のり弁。

または 鳥ソボロにスクランブル・エッグをのせた二色弁当。

それに ぎっちりオカズが詰まった二段目が加わる。

 

 

  ―  そんなこんなで  ジョーは今 二段弁当を持って出勤している。

 

     よおし。  しっかり務めて ・・・

     ぼく。    フランソワーズに申し込むんだ!

 

 

   あの  一生 ウチのごはん 一緒にたべたいです って!

 

 

*************************        Fin.        **************************

Last updated : 04.18.2023.              back       /      index

 

*****************    ひと言   ****************

これで 話の冒頭とつながるのであります ☆

なんてことないハナシ それも ジョー君ののろけ話みたいだね・・・

すいません  <m(__)m>  誰も読みにこないから いっか〜〜 (*^^)v